契約にかかる手間を見積に含めているか?

つい最近まで勘違いしていたけど、業務委託=委任(準委任)ではない
ぶっちゃけていうと"業務委託"という言葉は民法上には条文が無いので、単なるビジネス用語ということだった。


それはさておき、契約の小ネタ。

ソフトハウスとして独立して、小さくないSIerやユーザー企業と始めて取引を開始する場合、以下のような手順を踏むことになります。

  1. 信用調査(される)
  2. 基本契約
  3. なんやかんやヒアリング
  4. 個別契約(今回の案件ね!)


独立したエンジニアがかならずハマる落とし穴。これら契約にかかる手間を甘く見ると、あっという間にジリ貧になってしまいます。
必ずこれらの作業にかかる日数(手間)を見積に含めましょう

信用調査

直近3年の決算書出せって言われるわけですよ。
メインバンクはどこか?資本はどこから出てるのか?
最近ではほとんど関係ないけど、昔はライバルメーカー(FだとかNだとかHだとか)の資本が関係してないかチェックされてたようです。


会社によっては資本金や従業員数などによって年間で発注できる上限額が設定されます。


というのは名目でして、R100人程度のSIerではほぼチェックしません。 形式です。
(逆にちゃんと見る会社はちゃんとした会社ってこと)

基本契約

 「業務委託基本契約書」とかそれっぽいタイトルがつきます。 普通は印紙を貼りません印紙は4000円が普通です。(金額を書かないので)。
 今後の取引全般に影響する内容が書かれています。 ひな形を送りつけてくるのでちゃんと目を通しましょう。
 すくなくとも、"取引形態"、"知的所有権"、"賠償"、"紛争の解決"には必ず目を通すこと。
 NDAについては別契約になることが多いです。


 契約形態は、今後の個別契約においてなされうる契約形態がすべて書かれます。

 どういうことかというと、基本契約書で、弊社からの発注は"時間単価での準委任"か"価格と期間固定の準委任"ですと書かれていた場合、請負にてシステムを納品する契約を交わした場合はこの基本契約の"外"で契約を行ったことになります。

 その場合はあらためて協議し、契約書を作成しなければなりません。


 知的所有権は成果物の知的所有権についてです。
 GPLなソフトウェアを利用する場合についての記載があるかどうかチェックしましょう。
 準委任の場合は、成果物に対するすべての権利を譲渡することになります。 つまりクリエイティブな作業はすんな ってことです。
 請負の場合は権利の譲渡が行われるタイミングに注意。 通常「検収が終わった時点」です。 それまではすべて受託側の所有です。


 賠償は賠償。 遅延損害金とかです。
 上限が決まってることを確認。


 紛争の解決については裁判所がどこになるかをチェックしときましょう。


 大体、ここまで。
 会社の定款や決算書、あとは振り込み口座の通知書を送ったら口座開設(取引開始)です。

なんやかんやヒアリング

 プライバシーマークとかとってる会社だとこういうことをやってきます。
 "本当のこと"を書きましょう。

個別契約

 で、やっと個別契約です。
 金額の大きな場合、もしくは工期が長い場合を除き、"見積書"が個別契約書のかわりになります。
 正式に契約書類として認められるのは"注文請書"なんですが、実質的には見積書の記載に強く縛られます。

 ただし印紙を貼るのは見積書ではなく注文請書。
 よく注文書と一緒に発注元フォーマットの注文請書が送られてきますが、必ずチェックすること

 見積もった内容と同等か(品名、納期、金額、契約方式)? 付帯条件はついていないか?

こんだけやって、やっと作業に入れる…。

 特に契約は古〜いひな形を何も考えずに押しつけて来ることもあります。 気をつけましょう。

 契約のミスで会社が倒産! ってのじゃぁないです。
 独立したエンジニアにとって一番困ること、それは延々と時間をとられることです。
 これはミスっててもなかなか自覚しづらいんですが、ボディーブローが如く確実に体力を奪います。

 かなりの場合、契約の時点(作業の前)で気をつけることで防ぐことが出来ると思います。